信号待ちしていた、私の視界に折りたたんだ紙切れがあるのが映りました。
”もしやっ″と思い自転車を降りて、目にもとまらぬ速さでそれを拾いました。
それは千円札。どこをどう見ても本物の千円札。百円ショップで何でも10個買えるあの紙なのだ。
交番に届けることも一瞬考えたけど、失くしたときの用心にお札の番号を控えている人はいないし(たぶん)、警察だって忙しい。そんなものにかまっているほどヒマではないのだ。
ここは買い物に行ったご褒美に神さまがくれたに違いない。そう考えることにして、この千円はもらうことにしました。
―その千円以来、大物を拾うことなく、時折り一円玉を拾い上げてはため息をつく日が続いています―。