山行記・尾瀬夜行23時55分

東武夜行電車とバスで行く夜行1泊2日の尾瀬沼尾瀬ヶ原縦走

◇集合 7月12日(金)東武浅草駅・23時55分発の尾瀬夜行にご乗車ください
      
◇参加  6名

◇会費 19,700円
*内訳
尾瀬夜行23:55片道プラン 5,900円(電車内で使うスリッパ、プレゼント/終着駅で朝食おにぎり弁当プレゼント/電車内でブランケット貸出/会津バス車内で乗車記念バッチプレゼント)
②旅行保険500円(1人/保険金500万、救難費用100万、入院1日/8,000、通院1日/5,000円)
③宿泊代 1泊2食付き 8,400円
④バスまたは乗合タクシー(鳩待峠~戸倉) 900円
⑤高速バス(戸倉~新宿) 3,700円
⑥昼食用きのこ弁当は別途840円。必要な方は幹事までご予約を) 

<山行記>
 東武鉄道の「尾瀬夜行23:55」で終着駅の会津高原尾瀬口に着いた。外は雨だった。参加者は6名。職場の仲間とその友人だ。案内役を受けてわかったことは、全員が尾瀬は初めて、ということだった。
 福島県側から木道で整備された登りを終えて、雨の中を沼山峠にたたずみ前方を望むと、眼下に尾瀬の湖と、湖まで延びた広大な草原とがある。いつもの年であれば湿原全体が黄色く染まっている。ニッコウキスゲの群落である。しかし、あにはからんや原は緑一色だった。ニッコウキスゲを好む鹿の食害がここまで及んでいるのかと思った。
 
ニッコウキスゲ
 
 峠を下りきるとコメツガの林に入り、そこを抜けるとこつぜんと、前方が開けて草原が広がっている。この辺から湖畔の長蔵小屋まで延びた草原は大江湿原といって、ニッコウキスゲカキツバタ、アヤメが、青草原の中を黄に紫に、ひときわ美しい模様を織りだしている。この草原の美観に女性が感動の声をあげた。「天国みたいだわ!」。
 この付近は尾瀬神苑と呼ぶにふさわしい。

大江湿原で

 ビジターセンターで一休み、尾瀬沼の畔にでて沼越しに燧ケ岳を仰ぎ見た。尾瀬沼は湖水面の標高が1665メートルで、周囲約8kmと、日本で一番高いところにある湖で、その西北には東北第一の高山燧ケ岳2356メートルがそびえている。周囲をオオシラビソ林で囲まれ、その中にダケカンバ、ミネザクラ、ナナカマドなどがあり、景観的には北欧を思わせる湖なのだという。
 

尾瀬沼越しに見える燧ケ岳

 この付近の山は優雅な山容の落ち着きと、崇高な山林と至るところにある数多くの湖沼と、そして草苔花卉の無限なことが特徴である。5月下旬の雪が消えるころから、10月中旬の霜が降りるまで、絶えず様々な花が咲いて土地のものも見飽きた事がない、と話している。
P7130663_convert_20130908113948.jpg
沼尻休憩所=尾瀬沼湖畔で

 尾瀬沼の西方には今夜泊まる尾瀬ヶ原が広がっている。長さ6キロメートル、最大幅約2キロメートルの草原は、四方を高山に囲まれて、中をヨッピ川が多くの支流を持って流れている。この川の先は、長さ500メートルにもおよぶ花崗岩の上を水が穏やかに流れ落ちる平滑の滝と、たぎり落ちる三条の大瀑布に到達する。只見川の渓谷はここから始まるのである。

 
 まれに見る水量の豊かさと豊富な草木の種類は、来訪者をして脅威の眼をいだかせる。無限に散在する池沼、ブナの大木、大きな針葉樹林、清楚な白樺の木立、千差万別の草花、周囲にそびえる山容の雄大さとこれを包む千古の時代より手が入らなかった森林、静かに流れる清らかな河川は、一歩この地に足を踏み入れた者に感動を与えずにはいられない。
 植物学者の武田久吉さん(故人・注)も湿原に魅せられた一人だ。「何度来てもまったくすばらしい。四方を高山に囲まれた大湿原。渓流、森林、沼、滝……こんなに条件をそろえたところがほかにあるかね。それに、高山植物の豊かさ……」はじめて足を踏み入れた22歳のときから100回以上も尾瀬を訪れた。

 原は第二長蔵小屋から間もなく始まる。私は湿原の一端に立ち、美しい高原、尾瀬の田代を見たものが、誰でも感じるように、この広いすがすがしい田代をあかず眺めた。
 

 
 夜が明けても、なお強い雨が降っている。夏のいちばん美しいとされるこの時期は原いっぱいに広がるお花畑を見ようと、どの山小屋も満杯だ。晴れていればハイカーの行列を避けるために原を大きく迂回して、ヨッピの吊り橋経由で中田代を目指すことにしていたが、混雑を覚悟で原の「銀座通り」と命名した中央の木道を進んだ。  
P7140735kinenn_convert_20130908114324.jpg
中田代にて

 それにしても尾瀬ヶ原は良いところだ。どうしてあの広い湿原が、美しく珍しい山草のけんらんたる田代ができたものか。爽快な田代の美はもちろんよいが、私の心を惹きつけたものは、原を、田代のなかを縦横にくねって流れている川の水だ。それは岩にせかれてたぎり落ちる激流ではなく、ちょうど田んぼの境を流れる田川のような流れだ。底まで透明な川、あるところは川底までの驚くべき深さをさえのぞかせている。魚の群れが、鮮流を切って、またはそれに従って遊泳している。川の曲がりくねりの面白さ、その流れに沿って密生している白樺や柳の木立、その下生のシダ類や水芭蕉などの発育のすばらしさ。

大きく育った水芭蕉の葉

 川の流れによって、その両岸にのみ茂っている帯のような森林の線によって、分けられた田代の名。下田代、中田代、上田代は皆それぞれの美観をもっている。
 なんとしても美しいのは中田代である。そしてそれは田代の中でももっとも広いものだ。行く手に雨に煙る至仏山の広大な姿を見ながら、遠くひらけている湿原を縦に歩いて行く気持ちは素晴らしい。原の美しさに見惚れながら足を停めて来たほうを顧みたとき、私たちに緊張味を与えるのは、原の東端に肩骨をもたげて、この高原を俯瞰している盟主燧ケ岳の威風堂々たる姿だ。

 竜宮小屋の先には、水がとうとうと流れているのに拠水林を伴わない川がある。水源が湿原の中か、近くの森林の湧水にあって、十分な量の土砂を運べないためか。川幅は2メートルに満たない。森林の方から流れ出た川水が渦を巻いて地中に吸い込まれていく。この川の出口はまもなく判明する。50メートル余先に直径1メートル余の湧水がこんこんと流れ出ていたのだ。可憐な水芭蕉の白い花が辺りを飾る雪解けの頃は、どのような眺めであろうか。春にもまたと思った。
竜宮小屋(中央)を過ぎると中田代に入る

 中田代の東寄りには下の大堀(しものおおほり)という川がある。この辺から田代はますますよくなり、植物の群落の美観は目立ってくる。池とうは中田代と上田代にもっとも多い。池の中には浮島が風に押されて静かに漂っているものを多く見る。コケの上をモウセンゴケ、青草などにおおわれている大小の浮島が、雨に打たれてもなお透明な池水の上を漂泊しているのが絵のようだ。
 池の中には可憐なヒツジグサやオゼコウホネの整った丸い葉が浮いている。水面からのぞいている三枚葉は白花をつけるミツガシワである。
 

池の中に漂っている浮島

 原はどこでも湿地である。今は木道が敷かれて歩きやすいことこのうえないが、木道がなければ、足はいつも水につかり腰を下ろすにもよほど場所を選ばないとリュックザックの置き場所にも困るぐらいだろう。

 中田代を過ぎて尚進んでいくと牛首の山岬が原中へ突出し、上の大堀川を横切ると上田代に入る。このへんには夏鴨やおしどりがよく飛んでくるのを見かけるのである。美しい池とうをいくつも見ながら、ますます近づいてくる至仏山の姿や、この原には珍しいカラ松の林相を見、白樺や柳の美しい趣を眺めながら川上川を渡ると間もなく山の鼻である。
           鴨が一羽、羽を休めていた(資料写真)=2011年10月

 このとき、私たちをおおいに悩ましていた強い風と雨が一瞬のあいだに止んで、おだやかな尾瀬の表情が戻ってきた。小休止を終えると、また降り出したが、昼食をとっていた山の鼻でも、雨の合間に青空さえのぞかせていたのであった。

 連休の狭間とあって、山の鼻小屋付近はどこもかしこも人、また人であるが至仏への木道をすこし行くと喧騒がうそのように静かな世界が広がっている。この付近もまた美しい田代がある。景鶴山から至仏山に連なる低い山稜を背景に、白樺、ミズナラ、柳の森林が遠く眺めるさまは静寂の極みだ。

 山の鼻を過ぎると間もなく姫小松の巨木が雄壮な枝を張って点在するようになる。ひとかかえも、ふたかかえもあるブナの森林が見られるのもこの辺りである。なおも川上川を渡ると木道は川に沿って鳩待峠に向かう。

ブナの木

(注)武田久吉(たけだ・ひさよし):英国の外交官、アーネスト・サトウの次男。明治16年東京に生まれる。 小中学校時代から植物と登山に興味を持ち、植物研究を主な目的として大小の山岳を訪れた。明治38年、小島烏水らと日本山岳会を設立。同山岳会の創刊号に尾瀬の模様を紀行文として発表した。

 
◇行程  東武浅草駅・尾瀬夜行列車23:55→北千住駅0:11→新越谷駅0:26→春日部駅0:42→会津高原尾瀬口03:18(03:50まで車中仮眠。駅改札下でおにぎり弁当を受取)/会津高原尾瀬口04:20→バス→沼山峠06:10/06:30→歩20→沼山峠展望台06:50/07:00→30→大江湿原分岐07:30→20→尾瀬沼07:50→10→ビジターセンター08:00/08:30→20→浅間湿原08:50→40→沼尻休憩所(コーヒータイム)09:30/10:00→120→尾瀬ヶ原入口・見晴(第二長蔵小屋で荷物を預けられます)12:00/12:30→30→温泉小屋13:00→20→平滑の滝13:20/13:30→40→三条の滝14:10/14:30→40→兎田代15:10→50→温泉小屋16:00→30→尾瀬ヶ原・第二長蔵小屋16:30(泊)
/第二長蔵小屋08:00→30→竜宮小屋08:30/09:00→30→ヨッピつり橋09:30/09:40→40→中田代三叉路・牛首分岐(休憩)10:20/10:50→45→山の鼻11:25(昼食)/12:30→90→鳩待峠14:00/14:30→(連絡バス)→尾瀬戸倉15:05着/尾瀬戸倉15:10→(高速バス尾瀬号)→川越的場17:55→(高速バス尾瀬号)→新宿駅東口19:05


◇山小屋
尾瀬ヶ原 第二長蔵小屋
夕食17:00~19:00  消灯21:00(自動消灯)  朝食6:00頃
シーツ、浴衣はありません。トレーニングウェアが便利です。
*昼食用のおにぎり弁当は700円(必要な方は小屋到着時に予約してください)


東武の夜行列車 → http://www.tobu.co.jp/2355oze/ 
尾瀬について → http://www.oze-fnd.or.jp/         


◇持ち物一覧表 (夏支度。現地の気温は都心よりも05度ほど低くなります)

尾瀬夜行ユニッククーポン券
□ 帰りの高速バスインターネット乗車票  
□ 現金  
□ 食器、はし、スプーン
□ 軽登山靴。防水がしっかりしたものがベスト。
□ リュックザック 下に軽いものを入れると楽。いざという時のために両手は空ける。ショルダーバック、手提げは不可 
□ 防寒着 梅雨が明けましたので薄手のベストなど
□ 防風着 ヤッケ、ウインドブレーカーなど
□ カッパ 理想は上下セパレートの雨具(防風衣・防寒着代わりにも)
□ 折り畳み傘 必ず持参してください
□ 長ズボン 動きやすいものを
□ 靴下 厚手のものを。靴ずれ対策になります
□ 替え下着
□ 水筒またはペットボトル
□ 帽子
□ 大きめのビニール袋。洗濯物をまとめたり、ゴミ袋がわりにしたり。
□ 行動食 チョコレート1枚とかビスケット1箱くらいはザックの中へ
□ 腕時計
□ 健康保険証
□ ザックカバー 雨対策。あれば便利です
□ スパッツ 朝露からズボンの濡れを防ぎます。各自の判断で。
□ ストック 疲労や足腰への負担軽減に。特に下りに有効。各自の判断で
□ 小物 タオル・ハンカチ・ティッシュ・タオルまたは手ぬぐい。各自の判断で。汗拭き用も
□ 歯ブラシなども各自の判断で 
□ 携帯電話 場所により電波が届きません。
□ 常備薬 持病の薬。予備も忘れずに。共同装備の薬品は別項に
□ カメラ・双眼鏡 予備の乾電池も忘れずに
□ ガイドブック・地図 観察用にあると便利です
□ 筆記用具・メモ用紙etc 記録、観察用に
□ めがね、コンタクト・溶液
■ 共同装備の薬品(幹事が持参) バンドエイド、包帯、ガーゼ、消毒用アルコール、脱脂綿、マキロン、はさみ、絆創膏。


◇緊急連絡先 
幹事携帯
◇救急
基本は近くの山小屋に連絡を。
①ビジターセンターは救急の中核(山の鼻7:00 - 18:00)(尾瀬沼7:00 - 16:00)
・窓口での簡易な手当や、片品村遭難対策救助隊の臨時隊員として担架搬送、ヘリ搬送に協力。救急車の要請も。
AED(体外式自動除細動器)を設置。心肺停止の場合、AEDが届くまでCPR(心肺蘇生法)を施すこと(別紙)。
②その他の留意事項
・山小屋によっては担架や松葉杖を置いてあります。
・入山者に医師がいないか探しましょう。
尾瀬ではこんな怪我に注意しましょう。
・木道上での転倒事故
・疲れによる目眩、そして転倒
・歩きながら振り向いて、木道を踏み外す事故多発。左下腿に深い裂傷または捻挫。

医療機関
福島県立南会津病院
〒967-0006 福島県南会津郡南会津町永田字風下14-1
TEL 0241-62-7111(代表) FAX 0241-62-0200
内科、外科、整形外科、眼科、皮膚科など。救急は随時受け付け。
 miaizumapcanvas_convert_20110617151858.jpg 
 
利根保健生活協同組合 利根中央病院
群馬県沼田市東原新町1855-1
TEL.0278-22-4321 FAX.0278-22-4393
内科、外科、整形外科、眼科、皮膚科など。救急は随時受け付け。 map_tonechuou-h_convert_20110617152609.gif 
 
檜枝岐診療所
〒967-0523
福島県南会津郡檜枝岐村字下ノ台401-4
電話0241-75-2341
診療科目:内科、小児科
診療時間:土・日曜日は9:00から17:00 �O�}���f��_convert_20110617153613 
◇追記
次回は尾瀬沼ナイトハイクを企画しています 
見慣れた場所も、夜ともなると別世界。月夜の尾瀬沼北岸を探検したら、沼尻平でのひと時を。                        
8月17日(土)~ 18日(日) 長蔵小屋沼畔 1泊  参加料金 大人9,400円 + 7,000円(往復のバス代)

1日目 沼畔長蔵小屋 集合 21:00 長蔵小屋発~尾瀬沼北岸~沼尻(ティーサービスあり)~24:00長蔵小屋着
2日目:ゆっくりお休みいただいた後、ブランチで解散
                    お楽しみに。