写真提供=NPOクリエイティブ・コモンズ
冬になって、前はよく庭に来ていた雀たちがこの頃は姿を見せない。雀はどこへ行ったのか、いなくなったのかと考えるうちに、以前は町中が木造家屋で巣作りが容易だったので沢山来ていたのだと気がついた。プレハブ住宅が目立つようになり、なかには雀が巣をつくらないように仕上げる家もあるそうで雀の世界も住宅難なのかと思った。
そこでひと握りの米を庭に撒いた。しばらくは姿を見せなかったが、そのうち一羽、二羽と来るようになった。どうして彼らはそれに気がつくのか。生きるために一心に目を光らせているんだ、とねぎらいたいような気持ちだ。オナガも来る。
毎日あげるのも近所迷惑かもしれないし、蒔きえを頼りにするようになっては雀のためにならないと思い、餌が乏しくなる冬だけにしている。
マンションのガラス越しに米をついばむ雀を眺めるのが折々の楽しみになった。部屋のなかから見ているのに、私が身動きするとその気配でたちまち飛び立って行く。ゆっくりお食べ、何もしないから、といいたいが、一斉に飛んで行ってしまう。
しばらくして気がつくとまた来ている。ゆっくり食べさせたいので身動きもせずに息を殺すような思いでいる。かわいいので、写真に撮ろうと構えていると今度はなかなか戻って来ない。
春になり初夏になった。冬の間いっとき賑やかになる庭先も、いまは思い出したように雀がくるばかりだ。それでも、私がベランダにでて部屋に入ると2,3羽が道路に降り立つことがある。ぴょんぴょん跳ねながら生垣をくぐって庭に入ってくる。その愛らしい姿見たさに、そっと待つのだ。