「道をたずねる」(平岡陽明著、小学館、2021)という本を手にとりました。住宅地図づくりに生涯をかけた男たちの物語です。
私が勤めた新聞社の職場には、かつて東京本社管内の住宅地図が書架にズラッと並んでいました。
地上にある建造物と居住者がすべて記してある人類史上でも類を見ないものです。紙の本は、やがて電子化されてパソコン上で検索できるようになりました。
「道に迷いました」という記者さんからの電話。今でこそ、記者のスマホにホイッと送れるようになりましたが、電話かファックスが頼みの時代はそうもいきません。自動車電話からかけていることがわかったので、住宅地図をにらみながら「…そこを右、次、二つ目の信号左…」とナビゲーター役よろしくという経験もしました。
それにしても、改定作業に一日一千人、年間のべ30万人の調査員が一軒ずつ建物を調査して、「昔ながら」の改訂作業を行っていることを知り驚きました。
足でかせぐローテクと情報化に対応するハイテク。
いつかどこかで、首から画板をぶら下げている調査員と出会うことがあるかもしれません。