百名水・水汲み場と風の道

日本の名水100選のひとつ、釜伏山の日本水(やまとみず)を飲んできました。熊谷から秩父鉄道に乗って30分余。波久礼駅に降りた。かねてよりの課題だった源泉を辿る旅だった。

 *日本水(やまとみず)  寄居町風布の釜伏山頂上直下の壁面から湧き出している水のこと。はるか昔、日本武尊が東征の折、釜伏山で戦勝を祈願し、その時、んどの渇きをいやすために剣を岩壁に刺したところ、たちまち冷たい水が湧き出したとされる。昭和60年に環境省の「名水百選」に選ばれた。日本水を源流に流れる川が風布川で6キロ下流の荒川玉淀湖へそそぐ。この間がハイキングコース「風の道」になっている。途中には「夫婦滝」や「天狗岩」など見どころもある。風布集落に入る直前に神社があり杉の大木が見事。10月20日からはミカン狩りも始まる。
 風布の集落からは車道を少し歩き、釜伏山へ通じる登山道を登る。しばらくは杉の植林地が続く。尾根まででると、コナラなどが混じった二次林へと変わる。本来ならこのあたりから日本水が湧き出している源流へと下っていくが、蛇紋岩でできた岩壁が崩落する恐れがあり、平成14年から立ち入り禁止になっている。下りないでそのまま鎖場を登っていくと釜伏神社に出る。
 名水は神社を下った車道際に水汲み場があるが、残念ながら日本水とは直接関係ない。下流の湖を見下ろすような位置に「かんぽの宿」がある。

 
駅から10分も歩くと風布川(ふっぷがわ)の清流に辿り着く。「風のみち歩道入れ口」という道標が目についたが、初めてのところで地図もないので、どんな道かわからん。川に沿って舗装された林道を歩いてたら、川をはさんだ向こう岸に遊歩道がつかず離れず続いているのに気づいた=23日

水がきれい。透明感が際立っている。濁りがなく川底まで澄んでいる。深さはくるぶしから膝ぐらい。水遊びに最適だ。「子どもたちが小さいころに、連れてきたかったなあ」、そんなことを思いながらシャッターを切った=「風のみち」から
                日本水源泉
 林道を行くか山道の花山コースをとるか迷った。道を尋ねられたおじさんは「山道はいくつも分岐があるから、時々騒ぎになるよ」と言っていたからねぇ。迷ったら戻ろう、ということになって登りました。
 尾根に出てからアップダウンしながら進んでいくと、あろうことか岩場を登るはめに。ロープを伝いながら慎重に足を運ぶ。
 ありました。「日本水(やまとみず)源水まで40メートル」の道標が。横に、もうひとつの看板も。「立入禁止 この先、日本水の水源については岩盤の崩落が、予測されるので立入を禁止します」……。なんなんだ、この看板は。嘘だろ! 
 仏像にはさまれている碑は「名水百選選定記念碑」。中央左側の竹筒からチョロチョロ流れているのが、ありがたい源水です。
  行列ができていたのだろう、水源に「一人1リットルまで」と、書かれていた文字は印象的だった。ここは、誰も来なくなった水源に替わる水汲み場だ。アングルを間違えた。お尻がケツレイ、いや、失礼しますといっている。
 「おじさん、どこからですか?」と聞いてみた。「大宮から。ここまで60キロぐらいだからね。たいしたことないさ」。 ペットボトル、ざっと数えて140本ぐらいか。すごいぞ、これは。 「いや、4軒分なんだ」と、おじさん。 「この水を飲み始めてから身体の調子はどうですか」と水汲みに忙しいおじさんの背中に声をかける。 「いやー、もう、この水じゃあなきゃ、だめだね」。
 この不思議な水を知ったのは、入院中のおばあさんからだった。「私は若い頃からお酒が好きでね。身体を壊してしまったんだよ」。万病に良いというので、来る日も来る日も釜伏山から汲んできた水で食事と飲料を作っていたという。ご主人の友だちが見かねてのことだった。甘露水。これが効いた。「水源からじゃなきゃ効かないよ」と話してくれたのだった。
  川沿いの林道を歩いていたら沢ガニが……。立て看に「沢ガニの採取禁止」。
 


1時間ほど歩くと「風のみち」を抜ける。その先は……  日本水で仕込んだソバが味わえるお茶屋さん。いいところにあるなあ。ひと汗かいておなかもクークーいってるし、大宮駅でおにぎり買うんじゃなかった。後悔、後悔。ゆずみそまんじゅうと小倉まんじゅうを食べてみたけど美味しく満足でした=店先のアケビ棚で