天ぷら屋は、しもた屋風 (ふう) のお店だった。幟が置いてなければ、商店とは思わず通り過ぎてしまうところだ。
売り子はおばあちゃん。ちんまりした商品棚に野菜天などが収まっている。鰯の煮付けだろうか、天麩羅を主力にその他のお総菜が申し訳なさそうに並んでいるのだ。
店は3畳余りの広さだが、年季の入った黒光りの床や使い込まれた鍋類に老舗の歴史が刻まれてるような気がした。
聞けば祖父母の時代から60年以上になるという。
かつて、東京の下町にはあちこちの路地にこんなお店があった。
「また、立ち寄りますからね」。おばあちゃんの笑顔をもらって店をあとにした。
かき揚げ2、鯵2、人参、茄子、舞茸各1で600円余。紙の経木に包まれた天麩羅たち。
食感は素材の旨みを活かして、サクッと揚げられている。この辺の人たちは、こんなに美味しいものを食べているのかと思った。